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府中けやき共同事務所

2020/10/31

遺留分って何?

こんにちは!

Go Toトラベルに続いてGo Toイートもスタートしました。制度開始である10月1日から16日までで延べ約1,092万人の予約があったそうです。
皆さんはすでに利用されたでしょうか? 
まだまだ大人数での会食は難しいのが現状ですが、感染対策をしっかり行ったうえで制度を利用し、
美味しいものを食べに行くというのも息抜きにいいかもしれませんね。


さて、今月のブログは『遺留分って何?』と題して、相続の基礎である遺留分について解説してまいります。
当ブログでは相続の内容を中心に基礎的なことから解説を行っておりますが、『遺留分』については単体で取り上げたことがありませんでした。
「誰にいくら遺す」ということを考えて行く上でも、知っておかなければならない基本的な知識の一つが『遺留分』となりますので、この機会に是非知っておいていただければと思います。



遺留分ってどういうもの?

遺留分とは「相続人が持つ最低限の相続分」のことで、当ブログでもたびたび登場する民法に定められています。

相続が発生した場合(誰かが亡くなった場合)、遺言書が無ければ一般的に遺産分割協議を経て法定相続分通りに遺産は分けられます。

しかし、以前のブログでも解説した様に遺言書がある場合は、遺言書に不備の無い限り基本的には書いてある通りに遺産は分けられます。家族の誰かに多く遺したり、お世話になった人や特定の団体に財産の一部を遺贈したりといったことも可能です。

そのため、遺言書の内容によっては遺された家族に著しく不利益がもたらされてしまう場合もあるのです。
特に遺された家族が、亡くなった方の収入や財産によって生活が維持されていた場合なおさらでしょう。

そこで、亡くなった方に近しい相続人を守るため、最低限の相続分として遺留分は存在するのですが、近しい相続人すべてが持つものではありません。
詳しくは下の表をご覧ください。

遺留分は誰が持っているの?

 

上表をご覧いただければお分かりの通り、近しい相続人の中でも兄弟姉妹に遺留分はありません。亡くなった方の配偶者、子、親のみが持つ権利です。

兄弟姉妹に遺留分が存在しないということは、代襲相続が発生した場合でも甥姪にはやはり遺留分は存在しません。
反対に亡くなった方の孫であれば代襲相続となってしまった場合でも遺留分は存在します。

上表を元に例を挙げて相続人ごとの遺留分を見て行きましょう。

例1)多額の財産を他人に遺贈していた場合

 

亡くなった方の遺産は1,500万円の自宅と8,000万円の預金でした。
しかし、生前お世話になった人へ預金のすべてを遺贈し、自宅は配偶者へ相続させる遺言を残していたとします。

「お父さんが考えてやったことだしこれでいい」と思えれば良いですが、そうはいかないことの方が多いでしょう。
ここで遺留分の出番となるわけですが、遺された家族それぞれの遺留分について見て行きましょう。

配偶者個別の遺留分は9,500万円×1/4=2,375万円
子どもたち個別の遺留分はそれぞれ9,500万円×1/8=1,187.5万円

この内配偶者は1,500万円の自宅を相続で取得しているので
2,375万円-1,500万円=875万円の遺留分が存在するということになります。
子どもたちはそれぞれ1,187.5万円の遺留分を持ちますので、今回の例で言うと遺贈された方へ対し遺された配偶者も子どもたちも遺留分侵害請求を行うことが可能です。

例2)子供がおらず配偶者へ全財産を相続させた場合

 

先ほどの例と違い夫婦の間に子どもはいません。
この場合、遺言書で配偶者に全財産を相続させるという記載があれば、自宅も預金も配偶者が相続することになります。先ほど解説した通り、兄弟姉妹に遺留分はありませんので、この例の場合遺された兄弟たちが遺留分侵害請求を行うことは出来ません。

注意していただきたい点として「子どもがいない場合財産は配偶者がすべて受け取れる」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんがそうではありません。
この例の場合、遺言書が無いと兄弟にも法定相続分がありますので、配偶者がすべての財産を受け取ることは出来ません。仮に法定相続分通りに分けたとすると兄弟それぞれ1/8ずつ相続することが可能です。

お子さんのいない方で、配偶者に全ての財産を遺したいと思っている方はご家族の状況にもよりますが、遺言書の作成をおススメいたします。


例3)家族の誰かが多く財産を貰っていた場合

 

恐らく一番多いであろう例をご紹介します。
遺言書にはそれぞれ上図のような遺産分割が記載されており、遺された家族に若干差のついた内容となっていました。
遺留分を計算してみましょう。

配偶者の遺留分
9,500万円×1/4=2,375万円

子どもたちの遺留分(個別)
9,500万円×1/8=1187.5万円

配偶者に比べて子どもたちの相続する遺産は少ないですが、遺留分は満たしています。よって遺留分侵害請求は出来ない…と思いがちですが、図をよくご覧ください。息子は5年前に父より2,000万円の贈与を受けています。

これは特別受益(被相続人から生前贈与を受けた場合など)と言い、相続法改正以前は期間の制限なくさかのぼって遺留分を計算するための基礎財産に組み込まれていました。しかし改正相続法では、相続開始前10年以内にされたものだけが対象になるというルールに改正されました。

これを踏まえて見て行くと5年前に贈与された2,000万円は10年以内というルールに該当しますので、生前贈与された2,000万円は持ち戻して(基礎財産に入れて)計算し直すことになります。


基礎財産は9,500万円+生前贈与されていた2,000万円=11,500万円
配偶者の遺留分は
11,500万円×1/4=2,875万円

子どもたちの遺留分はそれぞれ
11,500万円×1/8=1,437.5万円


となりますので、娘さんが相続した1,200万円は遺留分を侵害されているということになります。1,437.5万円-1,200万円の237.5万円は遺留分侵害請求を他の相続人に対して行うことで取り戻すことが可能です。

親から子への贈与では住宅建設や結婚など割と多くみられることですので、特に親が高齢の場合は先々の不要なトラブルを回避するためにも、慎重な判断が必要となるでしょう。


遺留分は何で支払う?

改正相続法により遺留分の支払いを原則金銭で行うというルールが新設され、以前は遺留分減殺請求と呼ばれていたものが、遺留分侵害額の請求という呼び名へ同時に変更されました。

『減殺』とは少なくすること。減らすことの意味ですが、「減らされた遺産そのものを取り戻す」権利となっていたため、その権利行使により、それぞれの財産について共有関係が生じるものとされていました。

そのため争いの当事者同士で不動産を共同所有することになり、売却したくても出来ないといったような問題も多数発生していました。

対して「遺留分侵害請求」は金銭的な保証となりますので、望まない共同所有は無くなり、すでに売却された後だったとしても、遺留分相当の金額を請求することが可能です。


遺留分を請求できない人

請求できる場合・出来ない場合をそれぞれ解説しましたが、本来遺留分を持つ人でも、次のような場合請求することはできません。

1.相続放棄した場合
これは「遺産いりません」と自ら放棄するのですが、放棄した人は始めから相続人に存在していなかったものとして扱われますので、相続放棄があった場合遺留分も消滅します。

2.相続を廃除された場合
被相続人へ暴力などの虐待や重大な侮辱等問題のある行動をした相続人がいた場合、あらかじめ家庭裁判所に相続人の廃除を申し立てることで相続権を奪うことが可能です。しかし、被相続人が亡くなってからでは出来ません。生前に行うか遺言書への記載が必要です。遺言書への記載を行った場合は、指定された遺言執行者が代わって家庭裁判所に相続人廃除の請求を行います。相当の理由がないと認められないため、「嫌いだから」などという理由では基本的に廃除は認められません。

3.相続の欠格となった場合
こちらはレアケースですが、相続人が被相続人を殺害する。遺言書の隠ぺい・偽造、強迫して書かせるなど非合法な行いをした場合に当てはまります。相続欠格者となると相続人の資格は永久に失いますので遺留分も消滅します。


遺留分請求の時効

遺留分侵害請求にも時効が存在します。次の二つのうちいずれかの期間となっています。

①相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年
②相続開始から10年

相続の開始とは被相続人が亡くなった時とほぼ同時ということになりますが、基本的には亡くなってから1年以内に請求をしないと時効を迎えてしまいます。また、自身が前妻の子である場合や、海外に住んでいるなどの理由で侵害された遺留分があったことを知らなかった場合でも、10年経てば時効となってしまいます。

一度遺留分侵害請求を行えば時効はストップしますので、自身の遺留分が侵害されていることを知った場合には、早期に専門家へ相談し請求手続きを取られるとよいでしょう。


遺留分で揉めないためには



遺留分は請求するものです。例1)のように、第三者に多額の遺産が渡るようなケースでも、黙っていては1円も戻ってきません。もっとも、例1)のようなケースは侵害されたことにもすぐに気が付き、専門家へ相談し早期に請求手続きへ入れるとは思いますが、これが家族間になってしまうと後々まで尾を引く争いの火種となってしまうことも少なくありません。


遺留分請求の手段は、一般的に内容証明郵便を送付し請求するケースが多いですが、支払いに応じてくれない場合は家庭裁判所を通じて訴訟や調停といった手続きに移行して行きます。家族間で裁判沙汰という、出来れば回避したい事項ですが、事前に対策を立てることで遺留分の争いが起きる可能性を少なくすることは可能です。

対策の一つとして、遺言書の記載内容を遺留分に配慮したものにするということが上げられます。相続分の指定や特別受益の持ち戻し免除といったことは遺言書に記載できる事項ですが、遺留分を侵害した記載内容だった場合、優先されるのは遺留分です。
例1)にように他人に対して多額の財産を譲るというのは、家族関係やその他の状況により判断の分かれるところではありますが、概ね遺された家族は納得しないことでしょう。他方、特定の家族に多く相続させるといった内容も同様です。

これらは遺言書に記載する際、「本当にこの内容で良いのか?」ということを慎重に検討し、争いの火種を残さないような内容にすることで解決することが可能です。また、どうしても遺留分を侵害される人が出てきてしまう場合は、前もって理由をよく説明し、関係者同士で話し合いの席を設けるということも大切ですね。


今回のまとめ

相続で揉めることの代表的な例が「遺留分」です。良かれと思って書いた遺言書でも蓋を開けてみれば争いの火種に…ということは意外と多くあるものです。

当ブログでもよくお話していますが、相続の基本は「腹を割って話す」ことから始まります。家族とは言え財産に関することです。生前贈与や遺言書への記載内容も遺留分には大きく影響することですので、「なぜその財産をその人に遺すのかもしくは譲るのか?」を十分に考え、気持ちの良い相続へとつながる努力を行うことが大切だと考えます。

遺留分を考えた上で遺言書を作成したいといった場合はどうぞ当事務所までご相談ください。
無用な争いとならないよう、ベストな方法をご提案させていただきます。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました。


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